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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)54号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

原審の挙示した甲一号証証人吉田多利男の証言に徴するに(記録三〇丁ウラ、三四丁)、原審は、本件土地につき代物弁済契約の予約がなされ、条件の成就にあたり、右予約完結の意思表示のあつたことを前掲として、右代物弁済は効力を生じ、土地所有権が若月信義に移転したと認定したものであることが窺える。それ故、原判決は所論引用の最高裁判所判例に反するものではない。また、吉田茂七の相続人吉田勝美が昭和二〇年五月一九日適法な限定承認の申述をしたことは所論のとおりであるが、原審の認定したところによれば、本件土地については、既に昭和一八年一月八日若月のために、所有権移転請求権保全の仮登記がなされ、右仮登記によつて移転登記の順位が保全された所有権は、条件成就により若月に移転し、同人は昭和二五年一一月八日所有権移転登記をしたというのであるから、右条件成就の日以後若月は本件土地所有権の取得をもつて第三者に対抗しうるに至つたものというべく、これと同旨に出でた原判決は正当である。所論引用の大審院判例は本件に適切でない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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